AGAとは「男性型脱毛症」のことをいいます。男性型脱毛症の特徴は、頭頂部や後頭部から薄毛になっていく傾向が多いです。
この脱毛症の原因として男性ホルモンが大きく影響していることがわかっています。最近はAGA治療を行うクリニックも増えてきました。
今回は、このAGAについて、脱毛症の原因から治療法とその効果の違いまで詳しく解説します。
AGAの症状が出ている方や、これからAGA治療を検討されている方はぜひ最後までお読みください。
そもそもAGAの原因は?
AGAと呼ばれる男性型脱毛症ですが、原因は男性ホルモンの作用が関わっていると言われています。
男性ホルモンの中でも悪性男性ホルモンと呼ばれるDHT(ジヒドロテストステロン)が、ヘアサイクルの乱れを起こすことによって髪の成長に影響を与えてしまうのです。
ヘアサイクルは髪の毛が生え始めて成長し、抜け落ちて新しく生えるまでの過程のことで、大きく分けて「成長期」「退行期」「休止期」の3つの段階があります。
この段階の中で1番長い過程は「成長期」になります。成長期は約2〜6年ほど続くと言われており、この時期には髪の根本の細胞分裂が活発に起こり、髪の毛が成長していきます。
DHTが、脱毛因子を増やし、髪の根本にある毛母細胞の活性化を抑えてしまうことによってAGAを発症させるのです。
AGAになると、DHTの作用により、先ほど説明したヘアサイクルのうち「成長期」が短くなってしまいます。
生涯で繰り返されるヘアサイクルの回数は限りがあリます。AGAの症状が疑われる場合は、ヘアサイクルが多く残っているなるべく早い段階でクリニックでの治療を開始することが大切です。
参照元:男性型脱毛症治療薬の研究動向
DHT(ジヒドロテストステロン)を減らすには
AGAの原因として大きく関わっているDHT(ジヒドロテストステロン)を減らすには、どのような方法があるのか解説します。
普段の生活の中で取り入れられることがあれば実行していきましょう。
DHTは男性ホルモンのテストステロンが5αリダクターゼという酵素の働きによって、活性の高いDHTに変換されます。この5αリダクターゼをの抑制をすることが、結果的にDHTを減らすことにつながります。
食生活の改善
食事の改善によってDHTを抑えることが可能です。5αリダクターゼを抑えて、DHTを抑制する効果をもたらす食べ物や栄養素を普段から意識的に取り入れるようにしましょう。
亜鉛(カキ、レバー、牛肉、しじみ、パルメザンチーズなど)
亜鉛は5αリダクターゼの抑制作用があり、DHTの産生を減らします。また、髪の構成成分であるタンパク質(ケラチン)を合成する作用もあり、髪質を良好に保つためにも必要な栄養素です。
亜鉛はカキに多く含まれていますが、カキを日常の食生活で積極的に取り入れるのは難しいのでサプリで摂取するのもおすすめです。
大豆食品(納豆、豆腐、豆乳、おからなど)
大豆食品のイソフラボンは、女性ホルモンの「エストロゲン」と似た作用があります。エストロゲンの上昇により、相対的に男性ホルモンが低下するのでDHTも減少します。
また、5αリダクターゼの作用を阻害する効果もあり、DHTの産生を減らします。
エストロゲンは髪のハリとツヤも与えるので髪の健康状態も良くしてくれます。
ビタミンB6(牛肉、豚肉、レバー、ピーナッツなど)
ビタミンB6は5αリダクターゼの抑制作用があり、DHTの産生を減らします。
また亜鉛の吸収にも必要な栄養素なので、亜鉛と合わせて摂取するようにしましょう。
その他(ミカンの皮・アロエ)
ミカンの皮に含まれるd-リモネンと、アロエに含まれるアロエンには5αリダクターゼ阻害作用があります。
ミカンの皮は細かく刻んで調理して取り入れたり、アロエはヨーグルトなどで摂取するのがオススメです。
生活習慣の改善
生活習慣の乱れやストレス・疲労の蓄積によってホルモンバランスが崩れると、テストステロンの増加につながりDHTの産生も上がってしまいます。
生活習慣を見直して、ホルモンバランスを整えていきましょう。
喫煙を止める
喫煙によって、体内の男性ホルモンの濃度が高くなることが分かっています。ハーバード大学が研究した喫煙によるAGAとの因果関係では、非喫煙者に比べて喫煙者の方がDHTの量が14%高いという結果が出ています。(参考:国立衛生研究所)
またタバコに含まれるニコチンや一酸化炭素の血管収縮作用により全身の血流が悪くなり、酸素がまわりにくくなります。そうするとヘアサイクルに関わる毛乳頭細胞にも酸素が届かず、髪の成長を妨げてしまいます。
十分な睡眠をとる
ストレスや疲れを軽減するために眠りの質を高めて、十分な睡眠時間をとるようにしましょう。質の良い睡眠は、ホルモンバランスを整えてくれます。
寝る前はなるべくスマホなどの液晶画面をみるのは避けて、睡眠の質を高めるようにしましょう。入浴後はストレッチをし血行の流れをよくするのもおすすめです。
適度な運動習慣
DHTは汗や尿によって体外に排出されます。適度な運動によって、汗をかくことでDHTを体外へ排出できます。
身体を動かすと、血行が促進され頭皮の健康状態も良好になり薄毛予防につながります。
またストレスも解消できるのでホルモンバランスが整えられます。無理なく続けられるウォーキングやジョギングを習慣化してみましょう。
喫煙や飲酒、ストレスはDHTの量を減らす効果のある亜鉛を消費してしまいます。過度な飲酒もなるべく控えるようにしましょう。
AGAクリニックに相談する
食事や生活習慣の改善によってDHTを抑制させる効果はありますが、それだけでAGAを防ぐのは困難と言えるでしょう。
AGA特有の脱毛症状が出ていたらAGAクリニックの受診が望ましいです。
AGAの治療はなるべく早めに開始するほうが治療効果が期待できるので、専門医がいるAGAクリニックに相談してみましょう。
AGA治療では、5αリダクターゼを阻害し脱毛を抑制する内服薬や、発毛促進をする外用剤などを使用します。
投薬治療以外にも、注入治療や植毛術などがあります。
患者それぞれのAGAの進行段階や、薄毛の経過・状態に合わせて専門の医師が最適な治療をしてくれます。
正しく治療を行わないと効果が出ないため、必ず専門のクリニックでAGA治療をしましょう。
AGA治療って何をするの?
AGA治療では、フィナステリドやデュタステリドの男性ホルモンを抑える内服薬でAGAの進行を抑制しながら、ミノキシジルの外用薬を併用し、発毛を促す方法が標準的治療になります。症状にもよりますが、内服薬と外用薬を一緒に使うことで、より効果を実感できます。
投薬治療以外にも、AGA患部に自毛や人工毛を移植する植毛術や、低出力レーザー治療、毛髪を成長促進させる成分を直接頭皮に注入する注射療法などがあります。
AGA治療にはさまざまな治療法があり、日本皮膚科学会が提示している「男性型及び女性型脱毛症診療ガイドライン」では、治療法に対して推奨度を分類しています。
推奨度の分類:A.行うよう強く勧める、B.行うよう勧める、C1.行っても良い、C2.行わないほうがよい、D.行うべきではない
各治療方法の特徴を解説していきます。
投薬治療
AGAの症状の進行を抑制する内服薬には2種類あり、どちらもテストステロンをDHTに変換する5αリダクターゼの作用を阻害することによって症状の進行を抑える効果を発揮します。
副作用としては、男性ホルモンを抑えることによって起きる、勃起不全(ED)や性欲減退などの男性機能低下が報告されています。
脱毛の進行を抑制する治療薬 | 推奨度 | 治療費の相場 | 副作用 |
フィナステリド内服薬 | 男性A 女性D | 5,000円〜8,000円/月 | 勃起機能障害、リビドー減少、肝機能障害、抑うつ |
デュタステリド内服薬 | 男性A 女性D | 8,000円〜10,000円/月 | 勃起機能障害、リビドー減少、肝機能障害、乳房障害、頭痛 |
参照元:プロペシア(フィナステリド)添付文書、ザガーロ(デュタステリド)添付文書
ミノキシジルは、もともと血圧降下薬として使用されていた成分ですが、体毛増強の副作用があり、その作用に着目して発毛促進作用があるAGA治療薬として使われています。頭皮に直接塗ることで、発毛を促進します。
ミノキシジルは外用薬が使われるのが一般的ですが、クリニックによっては内服薬を使用する場合もあります。
内服の方が外用薬よりも高い発毛効果があると言われていますが、頭痛やめまいなどの副作用のリスクが報告されています。現在内服薬は日本では認可されておらず、ガイドラインでは行うべきではないとされていました。
発毛を促す治療薬 | 推奨度 | 治療費の相場 | 副作用 |
ミノキシジル外用薬 | A | 5,000円〜13,000円/月 | 頭皮の痒み・かぶれ、ふけ |
ミノキシジル内服薬 | D | 6,000円〜12,000円/月 | 頭痛、めまい、動悸、息切れ、むくみ |
参照元:リアップ(ミノキシジル外用薬)説明書、ロニテン(ミノキシジル内服薬)添付文書、男性型及び女性型脱毛症診療ガイドライン
植毛術
自毛植毛術は、症状の出ていない健康的な頭皮の毛根を採取し、AGAの患部に移植する手術療法です。これに対して、人工植毛術はナイロンやポリエステルなどで作られた人工毛を移植します。
人工植毛術は人工物の移植による免疫拒絶反応が起こるリスクがあり、過去に多くの有害事象が報告されているため、診療ガイドラインでは行うべきではないとされています。
自毛植毛術は、高い生着率があり薄毛の改善効果に期待ができますが、自由診療になるため高額な費用がかかってしまう可能性が高いです。また、定着するまでは髪を強く洗わないようにして刺激を与えないよう注意が必要な治療になります。
また、外科的手術による痛みや傷跡が残る恐れがあり、合併症などのリスクもあることから手術に対して抵抗がある方が多いのが事実です。
基本的には内服薬や外用薬の投薬治療を行い、それでも治療効果がみられない場合に植毛手術の検討が推奨されています。
植毛術 | 推奨度 | 治療費の相場 | 副作用 |
自毛植毛術 | 男性B 女性C1 | 約40万〜130万円 | 麻酔中毒に伴う不整脈、血腫、むくみ |
人工植毛術 | D | ー | 有害事象あり |
参照元:男性型及び女性型脱毛症診療ガイドライン、局所麻酔中毒への対応プラクティカルガイド
LEDおよび低出力レーザー照射
低出力レーザー治療は、ヘルメットのような育毛器具を毎日頭にかぶることで照射ができ、頭皮や髪の健康を保てる治療になります。クリニックに定期的に通院せずに、自宅で育毛治療を行いたい方に向いているでしょう。
LEDは発光ダイオードと呼ばれる光で、その中の赤色LEDは頭皮の奥まで到達し、発毛増殖因子に刺激を与え分泌を促進します。また血流促進作用や、新陳代謝の活性化する効果もあります。
低出力レーザー治療は、レーザー波長を使った安全な低出力光学治療です。FDA(アメリカ食品医薬品局)の認可も受けています。
LEDおよび低出力レーザー照射治療は、発毛促進薬と併用して使用が可能です。
また、副作用が比較的少ないので持病や体質などで投薬治療が受けられない方に適しています。
治療法 | 推奨度 | 治療費の相場 | 副作用 |
LEDおよび低出力レーザー照射 | B | 約160,000円〜250,000円 | 照射部の異常知覚、軽度の蕁麻疹 |
注射治療
注射治療は、直接頭皮に発毛の促進効果のある成長因子の薬液成分を注入します。
治療法は主にメソセラピーと、HARG(ハーグ)療法があります。
- メソセラピー:髪の毛を成長促進させる成分(ミノキシジルや成長因子、銅ペプチドなど)を注入する。
- HARG療法(メソセラピーの一種):「HARGカクテル」呼ばれる髪の毛の成長因子である成分を注入し発毛を促進する。注射以外にもガスやレーザー照射で痛みを伴わない注入法もある。
しかし投薬治療に比べて、注射治療が優位に効果があるという論文は存在せず、世界的にもメソセラピーによるAGA治療は優先度が低く、推奨されていません。
また、HARG療法は毛髪の再生を促進する治療法であり、AGAの大きな原因と言われている男性ホルモンを抑制するわけではないのです。
ガイドラインでは安全性や有効性の検証がまだ不十分であることから、行わない方がいいとされています。
注射治療 | 推奨度 | 治療費の相場 | 副作用 |
メソセラピー | C2 | 約50万円/年 | 頭皮の痛み・痒み、発疹 |
HARG療法 | C2 | 約200万円/年 | 頭皮の痛み・痒み、発疹 |
AGAは患者それぞれの症例に合わせた治療が必要なため、クリニックの専門医師による問診やカウンセリングから開始するのが一般的です。
症状の進行段階や、頭皮の状態を診てもらうことで、それぞれの患者の症状に合わせた最適な治療法を決定します。
参照元:臨床発毛医学の現状と展望
AGA治療の流れは?
AGA治療で受診する際はクリニックによって病院に直接来院する対面診療と、ビデオ通話などを使用して受けれるオンライン診療があります。
それぞれの診療の場合、どのような治療の流れになるのか解説します。
対面診療の場合
- 受付・問診票への記入
- 専門医師による問診
- カウンセリング
- 頭皮の写真撮影・血液検査・薬の処方
- 数ヶ月ごとの再診
オンライン診療の場合
- 専門医師による問診
- カウンセリング
- 薬や血液検査キットの配送
- 数ヶ月ごとの再診
オンライン診療では、ビデオ通話などを通して問診やカウンセリングを行います。
脱毛症にはさまざまな原因があり、脱毛症状がみられても必ずしもAGAであるとは限らないので早めに診断してもらうのがいいでしょう。
まずは、クリニックに直接来院しなくても気軽に相談できるオンライン診断がおすすめです。
AGA治療の期間と費用はどれくらい?
実際にAGAの治療期間と、治療にかかる費用はどれくらいなのか、解説します。
これから治療を受けたいと思っている方は、費用や治療期間をぜひ参考にしてください。
費用相場
AGA治療の費用相場は月に15,000〜30,000円程度かかると言われています。
それぞれの費用の負担額をみていきましょう。
診察料の相場
病院を受診する際に毎回算定されるのが診察料です。
クリニックによって設定金額に多少の差はありますが、大体初診料が無料〜5,000円程度、再診療が1,000〜3,000円程度かかることが多いです。
検査料の相場
AGAの専門クリニックでは、現在のAGAの進行具合や体質確認のために検査を行います。検査を行うことで、患者に合わせた治療を行うためです。
検査は初回受診時と、その後は数ヶ月に1回と経過をながら定期的に行われるのが一般的です。
検査では血圧測定や、マイクロスコープ、頭部撮影などが行われます。
検査代は、1回につき5,000〜10,000円程度かかると言われています。
薬代の相場
AGA治療では、継続的にかかる費用として大きいのが薬代になります。
AGAの治療薬は、主に脱毛の進行を抑制する作用の薬と、発毛を促進する作用の薬があります。
発毛を促進するミノキシジルは内服薬と外用薬がありますが、外用薬が使われることが多いです。
AGAの症状によっては、内服薬と一緒に外用薬も併用することがあります。単剤処方よりも、抜け毛の抑制と発毛促進を掛け合わせた併用療法の方が費用は大きくなります。
治療薬 | 費用 |
プロペシア(フィナステリド) | 5,000〜8,000円/月 |
ザガーロ(デュタステリド) | 8,000〜10,000円/月 |
ミノキシジル外用薬 | 5,000円〜13,000円/月 |
ミノキシジル内服薬 | 6,000円〜12,000円/月 |
また、プロペシアやザガーロはジェネリック医薬品も存在しており、ジェネリックだと既存の先発品よりも薬価が低いためもう少し費用を抑えられるでしょう。
ジェネリックとは、他社メーカーが製造した医薬品であり先発品と同等の治療効果が証明されています。
治療薬 | 費用 |
フィナステリド(ジェネリック) | 3,800円〜5,000円/月 |
デュタステリド(ジェネリック) | 7,000円/月〜 |
治療相場の参照元:AGAメディカルケアクリニック、e-暮らしネット>AGA、イースト駅前クリニック>プロペシアジェネリック、イースト駅前クリニック>ザガーロジェネリック
こちらで費用相場を記載しましたが、AGA治療は自由診療になるため、実際に治療にかかる費用はクリニックによって異なります。
治療期間
AGAの治療期間は、人によって異なります。症状の進行具合や年齢によって効果の発現に個人差があるためです。
AGAを発症して、治療を開始した時期が早い人ほど治療効果が出やすいのです。
しかし個人差はあっても、治療をはじめて早ければ3ヶ月程度で症状の改善効果の実感を得られます。
平均では3ヶ月〜6ヶ月で治療効果が現れ、6ヶ月経つと薄毛の改善を感じる患者さんが多いです。
臨床治療の目安として、初回の効果判定時期は治療継続して6ヶ月後だと言われています。
シャンプー時や、くしで髪をといた時の抜け毛が減ってきたという実感があれば、効果が発揮されているとみなすことができます。
症状の進行レベルが高い場合だと、治療に時間がかかってしまう場合もありますが、今後の薄毛の進行を抑えるためにも焦らずに根気よく治療を続けていくことが大事です。
AGA治療は自由診療のため、治療の全額が自己負担であることから治療法はしっかりとクリニックで相談していただくことを推奨します。
治療期間が長いとどうしても費用がその分大きくなってしまうでしょう。
AGA治療をしている患者さんで、多くの方が費用面で後悔しています。
予算内の費用で、無理をせずに治療を継続できるかが重要です。
まずは予算から自分の症状に合わせた治療法を気軽に相談できるオンライン診断をおすすめします。